東日本大震災の被災地:福島県で学生がフィールドワーク実施

東京キャンパス開講科目「地域社会特講Ⅳ」(担当教授:辻英之)の履修学生12名が、2泊3日の日程で福島県原発被災地でフィールドワークを行いました(社会学部と総合経営学の学生が参加)。

この科目は、東日本大震災被災地の課題や今後の可能性などを社会学的見地から見つめることを目的としています。

履修学生が全員留学生ということもあり、留学生が被災地をどのような視点で見つめるのかという調査も並行して行われました。

この調査は、青森キャンパスの藤公晴先生がフィールドワークに同行のうえ、担当いただきました。

初日は、福島県飯舘村の杉岡村長に講和をいただきました。全村避難を余儀なくされた飯舘村の被災の状況と復興の課題についてお話をいただき、学生とも活発なやりとりが展開されました。飯舘村長の逆境におけるリーダシップについて感銘を受けた学生が多かったようです。

その後、環境省福島地方事務所スタッフの案内により、普段は入れない「帰還困難区域(長泥行政区)」に特別許可をいただいて入域し、除染済土壌の再生実証実験の様子と成果を説明いただきました。12年が経とうとしている被災地を、留学生が被災地をどのように見つめたのでしょうか。生きた学びが始まりました。

夕方~夜は、長泥行政区の前区長:鴫原氏と学生が交流し、被災住民の本音をゆっくりと聞くことができました。この鴫原氏との交流の時間が深く心に残ったという学生がおり、やはり時間をかけて交流する意義を改めて思い知らされます。

2日目は、沿岸地区に移動し、まずは「バイオマスレジン福島」を訪問しました。コメからプラスチックを製作するベンチャー企業です。今津社長から同社の取り組みについて説明いただき、ここでも学生と活発なやりとりが展開されました。コメを食用ではなく資源として活用する発想や、地域農業の維持、そして地球温暖化防止など、多くの課題を解決する復興産業の展開に、学生からは驚きの声が上がりました。

津波の被害をまともに受けつつも児童全員が助かった奇跡の小学校「請戸小学校(浪江町震災遺構)」も訪れました。初めて被災地に足を踏み入れる留学生は、11年前の凄惨な過去を目の前に立ちすくみました。そして、展示されている子どもの作文に、未来への希望を感じ取ったようです。学生との学びは寄り道回り道を繰り返しながら、それでも前に進みます。

福島第一原発が見える巨大な防潮堤にも立ちました。土地を埋め尽くすフレコンバック(放射性汚染物質の入った黒い袋)を見ると、海の彼方に引きずり込まれる感覚に襲われます。フィールドワーク前に抱いていた福島の印象と、その目で見た福島の印象はどう変化したのでしょうか。

双葉町の「東日本大震災原子力災害伝承館」見学の後、同町内の特定復興再生区域を視察しました。昨年8月から居住が許された区域です。原発事故前の住民の、一割も戻っていないという双葉町。誰もいない、というか人の気配が全くしません。静寂が支配する駅前を留学生と歩きます。事前学習で、同じ場所から撮影した動画を見せていました。が、その目で見て、直に感じることに勝る学びはありません。それがフィールドワーク。そしてこれが原発災害です。

3日目は、学生一人一人が、今回のフィールドワークで得た思い、葛藤、学びを、たどたどしい日本語を紡ぎながら、言葉にしました。それを全員でシェア。全員が、「他の学生にもこの講義の履修を勧めたい」と答えました。

確実に言えることは、福島をイメージのみで見つめていた留学生たちが、2泊3日のフィールドワークにおける福島のひとびとの生の声を直接聞いて、心揺さぶられたということです。この学びを活かして、留学生たちが社会課題にますます丁寧に向き合うことを願います。

そして、今後は青森キャンパスやむつキャンパスの学生、さらには他大学の学生も合同参加できるような学びの機会・仕組みを検討していきたいと思います。

今回、ご協力いただいた以下の皆様、本当にありがとうございました。

飯舘村杉岡 誠村長

長泥行政区前区長 鴫原 良友氏

環境省福島地方環境事務所・福島脱炭素実現プロジェクトチーム 村山 友章氏、齋藤 まどか氏

バイオマスレジン浪江取締役社長 今津 健充氏