青森大学東京キャンパスは、2025年3月16日に、近隣の12の自治会、7つの避難所を運営する学校(小、中、高、大)を組織し、また、江戸川区、日本赤十字の協力を得て、「高規格避難所」開所訓練を行いました。
青森大学東京キャンパスが位置する江戸川区は、荒川、江戸川など大河川の河口部の海抜ゼロメートル以下地区にあります。区のハザードマップは、①区の面積の9割が水没し、②浸水高は2~4m、③水没期間2週間、とし、この狭いエリアに70万人をという人口を勘案すれば、同区の水災リスクは、おそらく日本一高いと言えます。
更に、東京キャンパスのある清新町・臨海町は、江戸川区で唯一水没しないエリアであり、周辺地域の避難所の大半が水没することから、最後の砦となる我々の避難所に避難区民の大量流入が起こることが容易に予想されます。
同訓練は、この難題に対応するため、①避難所を任される自治会・学校に「避難所で何が起こるのか」をHUGシミュレーションゲームにより体感する、②そのゲーム空間を現実に装備を整えた体育館で追体験してもらう、というものです。また、炊き出しのありがたさを実感してもらうため、台湾花蓮市の地震で有名になったボランティア団体「台湾慈済基金」日本支部とも協業しました。



冒頭の高規格の意味は、ブルーシート、段ボール、毛布の上で雑魚寝という従来の避難所ではなく、①スムーズな受付を可能とする避難者受付システム(同キャンパスが独自に開発)、②プライバシーに配慮した室内テント、③水循環型シャワー(WOTA)、④スターリンク通信、等を装備し、「プライバシーに配慮した女性に優しい避難所」という意味です。それは、能登半島地震の直接死の約1.5倍もの災害関連死を極力抑制する避難所の姿でもあります。
その趣旨に賛同いただき、同避難訓練当日は東京でも雪が舞う悪天候にもかかわらず、自治会に幹部を中心に90名もの方に参加いただき、協力者も加えた訓練参加者は110名となりました。地域貢献の一つ姿として、「大学の知」を地域に直接還元した初めてのイベントになりました。



また、これは、同キャンパスが唱える「自治会の活性化戦略」の3本柱(ヒト:防災士1,000名育成、モノ:高規格避難所の提供、カネ:コミュニティ水災保険の提供)の一つにあたります。「大学にしかできない地域貢献活動とは何か」を問い続け、日本一水災リスクの高いこの地で、着実に活動を実践していきたいと考えています。
青森大学東京キャンパス 総合経営学部教授 久保英也